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チチェンイツァで羽の生えた蛇の神様に会いたかった

メキシコ 2009.09

この日記をロシアから見ている人がいた。ズドラストヴィーチェ

ええと、メキシコ南東部にある古代マヤの都市遺跡チチェンイツァ。ここで春分の日と秋分の日の年2回だけ、古代マヤの天文観測技術を象徴するような現象を観測できるという。今回はそれを見に、秋分の日を狙って行ってみた。

説明しにくいことが起こります

テレビで「この後、驚愕の事実が明らかに!」などと言ってCMになるパターンがよくある。ぼくはああいうの苦手なのだが、今回はほんとに説明しにくいのだ。

まずは場所を確認しよう。ユカタン州のほぼ中央、メリダからバスで2時間半ほどだ。遺跡自体は有名なので、写真や映像で見たことがある人も多いんじゃないだろうか。

メキシコ 2009.09 このピラミッドに見覚えはありませんか

このピラミッドの北側の階段には天から降臨する蛇の像が彫られている。春分の日と秋分の日の年2回、夕方になると西日がピラミッドの段の影を蛇の胴体部分に映し出し、蛇の像に羽が生えたように見えるという仕掛けになっている。わかりにくい説明で申し訳ないが何を読んでもこういう書き方しかされていないのだ。そしてまさにこの日が秋分の日。

メキシコ 2009.09
蛇の像というのがこれ

メキシコ 2009.09
写真向かって右が西。白い線で示した部分に影ができる予定

それだけ?と思われた方は残念だがそれだけだ。それだけを見るために世界中から観光客がやってくるのだから仕方ない。ぼくもそれだけのために成田から片道18時間かけてたどり着いた(待ち時間除く)。「太陽の運行に伴う現象を見に遠くまで出かける企画」に最近ちょっと悪いイメージがつくような事件も起きたが、これがマヤの時代には神聖な儀式で、この影が見えたら春は種まきをする、秋は収穫をする、という目安になっていたのだそうだ。

つまり太陽の方角を正確に測定する技術が前提、その上でこれだけのでかいピラミッド(25mもある)を測定したとおりに正確に建てる建築技術、が使われていることになる。素直な人はここで「えーすごーい」となる。

しかし実際には古代マヤ人だからって計算だけでどんぴしゃに建てられるわけでもないんだろう。少なくとも、実際に建築作業にとりかかる前にミニチュアを粘土か何かで作って影の形を確かめる、くらいはしていただろう。ぼくはそう思う。

うかれている

話は少し前後するが、チケット売り場には行列ができる騒ぎになっていた。言っておくがメキシコでこういった行列ができるというのは尋常な事態ではない。

メキシコ 2009.09
影が見えるのは夕方なのに、昼前でこの盛況

入場口の係員の方から話しかけられる。だいたい以下のようなやりとり。

係員「日本人?NHNだ」
ぼく「NHN?」
係員「NHNじゃなくて、何だっけ、NHKか。NHK」
ぼく「NHKって日本のテレビのですか」
係員「うん。あと、たけし」
ぼく「たけしとNHKが一緒に来たんですか」
係員「そうそう」

スペイン語でのやりとりなのだが、係員の人がだんだん片言になってくる。たけしというのはあの世界の北野のことだろうけど、NHKでそんな番組あったっけか。

それはさておき、写真を見て天気が今ひとつであることに気づいた方は多いと思う。太陽が出てこないと影も何もあったものではない。晴れと曇りがめまぐるしく入れ替わる空の下、とりあえず写真を撮る。

メキシコ 2009.09
自分を境目にして右が曇り、左が晴れ。霊能者に見せたら何か言われそうだ

メキシコ 2009.09
こちらはピラミッドの東側。周りがお祭り気分満載の中で仕事をする発掘の人たち

日が傾くまでにはまだだいぶ時間がある。ひとまず遺跡内を見て回ろうか、と思ったそのとき。

メキシコ 2009.09
わー。ふーられたー

天気も人も、まるで落ち着く気配なし。夕方には晴れてくることを祈るしかないんである。こればっかりはどうしようもない。傘とカメラを出したりしまったりしながら、見どころを、あるいは見どころでないところを、駆け足で紹介しよう。ちゃんとした写真や解説が見たい人は「Chichen Itza」で検索すればたくさん出てきます。

メキシコ 2009.09
マヤ文化圏で各地に見られる球戯場。生贄を決める神事に使われた

メキシコ 2009.09
骸骨の神殿。インディジョーンズに出てきそうだ

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ピラミッドから北へ徒歩2分、聖なる泉。こちらでも人間を生贄として放り込んでいたそうで、古代マヤけっこう怖い

メキシコ 2009.09
生贄の心臓を切り出してこの上に置いたとか、もうそんな話ばっかり

そういった雰囲気の中でナタを置きっぱなしにして気軽にどっか行ってしまう作業員がいたりする。

メキシコ 2009.09
逆に考えると今は平和なんだ

おみやげの露店も書き入れ時だ。

メキシコ 2009.09
延々と連なる露店

とはいえ互いに言葉が通じないという前提で売るので、それほど営業攻勢はきつくない。「にーちは!」「やすり、やすり」「何をさますか!」「イチロー!」と、エキゾチックな日本語も飛び交う。飛び交う、というか一方通行。どう反応したらいいのかわからない、これが異国情緒というものだ。

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その他、ウシュマルにも負けない装飾過多な建物とか

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天文台。今後の天気、まったく読めない

いよいよです

スタートへ戻ってきた。いろんな人の話を総合したところでは、(晴れれば)午後5時にきれいな影ができるということで、概ね16:30くらいを目安に戻ってきて待てばよかろう、とのことだった。

本来はそういう情報はこっちに来る前に調べておくほうがいい。空き時間にちょっとネットで調べとけばいいや、ってなことも外出先ではままならないのだ。ちなみにぼくはメキシコの秋分の日が9月22日だということも出発の数日前に知った。冒頭に「秋分の日を狙って行った」と書いたがまんまと狙いを外すところだった。何事も準備が肝心だ。

メキシコ 2009.09
人が集まり始める

お、晴れてますね。人の影も濃く見えている。この後の天気も油断ならないが、とにかく待つしかない。

ところで皆さんご存知のことと思うが、晴れると暑い。

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木陰に退避します

メキシコ 2009.09
人にうもれる

メキシコ 2009.09
見えるように前へ出る。アメリカ人はすぐ脱ぐ

メキシコ 2009.09
日本人は傘をさす

階段のところ、ちょっとだけ影が波打っているのがお分かりいただけるだろうか。じわじわと日が傾き始めたのだ。こちらも太陽のようにゆっくり前へ出る。

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上のほう、蛇の尻尾の形ができ始めた

メキシコ 2009.09
このへん。白いところを見てください

予想はしていたがやはり地味。照りつける日差しの中、ピークまであと20分ほど。蛇の神様は降りてくるのか。

メキシコ 2009.09
世界が注目

だめでした

さんざん引っ張っておいてこれか。いや、現場にいたらきっとこのがっかり感を共有できたに違いない。


メキシコ 2009.09
太陽が雲に隠れた。このとき16:46

メキシコ 2009.09
影も消えました。あーあー

ほんとに最高のピークに達する直前で曇ってしまった。そしてこの場にいなければ味わえない微妙な雰囲気。ため息、半笑い、あきらめ、いろんな人の感情がいろんな方向に散らばっていくような印象を受けた。

メキシコ 2009.09
来たときと同じように、そぞろに散会

メキシコ 2009.09
あきらめきれない人たちも

この雰囲気を味わっただけでもよしとしたい。また日食と違って、年に2回はチャンスがあるのだ。

締めます

そんなわけで最後は残念な結果に終わったが、こんなふうに年2回空模様を気にしていたであろう古代マヤの人々にも少しだけ思いを馳せることができた。そして何かを気長に待つのは、それはそれで楽しい。遺跡はかっこいい。こんなもんでいいでしょうか。

メキシコ 2009.09
がっかりするようす

続きは来年の3月、春分の日に。

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